はじめに
デスクトップアプリを開発するとき、最初に悩みやすいのがフレームワーク選びです。
現在は、Windows、macOS、Linuxそれぞれに専用のアプリを作る方法だけでなく、ひとつのコードベースから複数のOSに対応する「クロスプラットフォーム開発」が広く利用されています。
ただし、デスクトップアプリ向けのフレームワークには、それぞれ異なる特徴があります。
Web開発の知識を活用できるもの、配布ファイルを小さくしやすいもの、モバイルアプリにも展開しやすいもの、高い処理性能を重視したものなど、得意分野はさまざまです。
この記事では、代表的なデスクトップアプリ開発フレームワークとして、次の6つを比較します。
- Electron
- Tauri
- Wails
- Flutter
- .NET MAUI
- Qt
比較する内容は、以下のとおりです。
- 使用する主な言語
- 対応プラットフォーム
- 開発の始めやすさ
- アプリのサイズと動作の軽さ
- UIの作りやすさ
- OS機能との連携
- エコシステム
- 向いているアプリ
それぞれの特徴を確認し、作りたいアプリや開発チームのスキルに合ったフレームワークを考えていきましょう。
比較
比較するフレームワーク
Electron
Electronは、HTML、CSS、JavaScriptなどのWeb技術を使ってデスクトップアプリを開発するフレームワークです。
アプリにChromiumとNode.jsを組み込むことで、ひとつのJavaScriptまたはTypeScriptのコードベースから、Windows、macOS、Linux向けのアプリを作成できます。
Webアプリの開発経験を活かしやすく、React、Vue、Svelteなどのフロントエンドフレームワークと組み合わせられる点が特徴です。
その一方で、アプリごとにブラウザエンジンを同梱するため、配布ファイルやメモリ使用量が大きくなりやすい傾向があります。
Tauri
Tauriは、HTML、CSS、JavaScriptなどのWeb技術でUIを作りながら、バックエンド処理にRustを利用できるフレームワークです。
ElectronのようにChromiumをアプリごとに同梱するのではなく、OSに用意されているWebViewを利用します。そのため、比較的小さく軽量なアプリを作りやすいことが特徴です。
フロントエンドにはReact、Vue、Svelteなどを利用でき、ファイル操作やOS機能との連携にはRustやTauriのプラグインを使用します。
軽量性や権限管理を重視したい場合に有力な選択肢ですが、高度な機能を実装する場合にはRustの知識が必要になります。
Wails
Wailsは、GoとWeb技術を組み合わせてデスクトップアプリを開発するフレームワークです。
画面にはHTML、CSS、JavaScriptまたはTypeScriptを使い、アプリのバックエンド処理にはGoを使用します。Windows、macOS、Linuxに対応しています。
Wailsは、Electronのようにブラウザ全体をアプリへ組み込むのではなく、各OSのネイティブなWebViewを利用します。そのため、Electronと比較して小さな実行ファイルや少ないメモリ使用量を目指しやすい構成です。
フロントエンドには、React、Vue、Svelte、Preact、Lit、Vanilla JavaScriptなどのテンプレートが用意されています。また、GoのメソッドをJavaScript側から呼び出せる仕組みや、Goの構造体からTypeScriptのモデルを生成する機能があります。
GoでAPIクライアント、ファイル処理、並行処理、データ加工などを実装し、その結果をWebベースのUIに表示できる点がWailsの強みです。
一方で、Tauriほど権限を細かく制御する設計を前面に出しているわけではありません。また、Electronと比較すると、利用者数やプラグイン、技術情報は少ない傾向があります。
Goを使って軽量なデスクトップアプリを作りたい開発者にとって、特に魅力的な選択肢です。
Flutter
Flutterは、Googleが開発するUIフレームワークです。Dartというプログラミング言語を使用します。
モバイルアプリ開発の印象が強いフレームワークですが、Windows、macOS、Linux向けのデスクトップアプリも作成できます。
Flutterでは、OSが提供する標準UI部品をそのまま配置するのではなく、Flutter自身の仕組みでUIを描画します。
そのため、異なるOSでもデザインを統一しやすく、アニメーションを多用するアプリや独自性の高い画面を作りやすいことが特徴です。
デスクトップだけでなく、iOS、Android、Webにも展開できるため、複数のデバイスに同じサービスを提供したい場合に向いています。
.NET MAUI
.NET MAUIは、Microsoftが提供するクロスプラットフォームUIフレームワークです。
主にC#とXAMLを使って開発し、デスクトップではWindowsとmacOSに対応しています。さらに、AndroidやiOS向けのモバイルアプリも開発できます。
C#や.NETを利用している企業や開発チームにとって、既存の知識やライブラリを活用しやすいことが大きな利点です。
特にMicrosoft製品を中心とした環境や、Windows向けの業務アプリを開発する場合に有力な選択肢となります。
ただし、Linuxは公式なデスクトップ対応の中心に含まれていません。Windows、macOS、Linuxの3つへ同じアプリを配布したい場合には、別のフレームワークを検討する必要があります。
Qt
Qtは、長い歴史を持つクロスプラットフォームアプリケーション開発フレームワークです。
主にC++を使用しますが、宣言的にUIを構築できるQMLも利用できます。デスクトップだけでなく、モバイルや組み込み機器など、幅広い環境に対応しています。
実行性能が高く、OS機能やハードウェアに近い処理を実装しやすいため、画像編集ソフト、設計ツール、計測アプリ、産業機器向けソフトウェアなどに適しています。
一方で、C++特有の難しさがあり、Web技術を使用するフレームワークと比較すると、習得に時間がかかる可能性があります。
利用方法によってライセンス条件も異なるため、商用アプリを開発するときには事前の確認が必要です。
基本項目の比較
項目 | Electron | Tauri | Wails | Flutter | .NET MAUI | Qt |
|---|---|---|---|---|---|---|
主な言語 | JavaScript、TypeScript | JavaScript、TypeScript、Rust | JavaScript、TypeScript、Go | Dart | C#、XAML | C++、QML |
UIの作り方 | HTML、CSS | HTML、CSS | HTML、CSS | FlutterのWidget | XAMLまたはC# | Qt Widgets、QML |
Windows | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
macOS | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
Linux | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 原則対象外 | 対応 |
モバイル展開 | 基本的に対象外 | 実験的・発展途上の部分あり | デスクトップ中心 | 得意 | 得意 | 対応 |
学習の始めやすさ | 高い | 中程度 | 中程度 | 中程度 | C#経験者には高い | やや低い |
アプリサイズ | 大きくなりやすい | 小さくしやすい | 小さくしやすい | 中程度 | 中程度 | 比較的小さい |
メモリ使用量 | 多くなりやすい | 比較的少ない | 比較的少ない | 中程度 | 中程度 | 比較的少ない |
UIの自由度 | 高い | 高い | 高い | 非常に高い | 高い | 非常に高い |
バックエンド処理 | Node.js | Rust | Go | Dart | C#、.NET | C++ |
エコシステム | 非常に大きい | 成長中 | 成長中 | 大きい | 大きい | 成熟している |
得意分野 | Webサービスのデスクトップ化 | 軽量性と権限管理 | Goを使った軽量ツール | モバイルとの共通開発 | 企業・Windows向け開発 | 高性能・専門的なアプリ |
アプリサイズやメモリ使用量は、使用するライブラリ、実装する機能、ビルド設定によって変わります。表はフレームワークの構成から考えられる一般的な傾向です。
開発の始めやすさ
ElectronはWeb開発者にとって始めやすい
Web開発の経験がある場合、最も始めやすい選択肢のひとつがElectronです。
HTML、CSS、JavaScriptという一般的なWeb技術を利用できるため、新しい言語を覚えなくても開発を開始できます。
既存のWebアプリをデスクトップアプリとして展開したい場合にも適しています。
ただし、実際の開発では、アプリ全体を管理するメインプロセスと、画面を表示するレンダラープロセスの違いを理解する必要があります。
TauriではRustが学習上のポイントになる
Tauriの画面部分には一般的なWeb技術を使用できます。
単純なアプリであれば、Rustのコードをほとんど書かずに開発できる場合もあります。しかし、ファイル操作や高度なOS連携、独自のバックエンド処理を実装するときにはRustの知識が必要です。
Rustは安全性と処理性能に優れていますが、所有権やライフタイムなど、初心者が難しく感じやすい概念があります。
Web開発の経験に加えてRustも学びたい人には適しています。
WailsではGoの分かりやすさを活かせる
Wailsでは、画面をWeb技術で作り、バックエンドをGoで実装します。
Goは文法が比較的シンプルで、標準ライブラリも充実しています。そのため、Webフロントエンドの経験者が、デスクトップアプリのバックエンド処理を学ぶ入り口としても利用しやすいでしょう。
Wailsでは、Goで定義したメソッドをJavaScriptから呼び出せます。また、Goの構造体に対応するTypeScriptモデルを生成できるため、フロントエンドとバックエンドの間でデータを共有しやすくなっています。
開発時にはwails devを使うことで、Goコードの変更に応じた再ビルドや、フロントエンドの変更に応じたリロードを利用できます。
ただし、Wailsを使うには、WebフロントエンドとGoの両方を理解する必要があります。JavaScriptだけで開発を完結させたい場合は、Electronのほうが簡単です。
FlutterではDartとWidgetを学ぶ
Flutterを利用するには、Dartの文法と、Widgetを組み合わせて画面を作る仕組みを学ぶ必要があります。
Web開発とはUIの構築方法が異なりますが、UIの変更を素早く確認できる開発機能が用意されています。
モバイル版とデスクトップ版を同時に開発する予定があるなら、新しい技術を学ぶコストに見合う効果を得やすいでしょう。
.NET MAUIはC#経験者に向いている
すでにC#や.NETを利用している場合、.NET MAUIは始めやすい選択肢です。
アプリのロジックをC#で記述し、XAMLまたはC#でUIを作成できます。
.NETのライブラリや既存のビジネスロジックを再利用しやすいため、企業の業務アプリ開発にも適しています。
QtではC++の知識が重要になる
Qtを十分に活用するには、C++の知識が求められます。
メモリ管理、ビルドシステム、コンパイラ、プラットフォームごとの差異など、学習する内容は比較的多くなります。
その分、OSやハードウェアに近い処理を細かく制御しやすく、大規模なデスクトップソフトウェアにも対応できます。
アプリのサイズと動作の軽さ
Electronは容量とメモリを多く使いやすい
Electronは、アプリごとにChromiumとNode.jsを同梱します。
すべての利用者が同じブラウザエンジンでアプリを実行できるため、OSによる表示の違いを抑えやすい一方、配布ファイルが大きくなりやすいという欠点があります。
複数のウィンドウや複雑なWebコンテンツを表示すると、メモリ使用量も増える可能性があります。
Tauriは軽量性を重視しやすい
TauriはOSのWebViewを利用するため、ブラウザエンジンをアプリへ同梱する必要がありません。
その結果、Electronと比較して配布ファイルを小さくしやすく、メモリ使用量も抑えやすい傾向があります。
ただし、OSごとに異なるWebViewを使うため、CSSやWeb APIの動作に差が出る可能性があります。
WailsもOSのWebViewを利用する
Wailsも、Electronのようにブラウザ全体を同梱せず、OSが提供するレンダリングエンジンを再利用します。
WindowsではWebView2が使われます。macOSやLinuxでも、それぞれの環境に対応したWebViewを利用します。
本番ビルドでは、フロントエンドのファイルを含んだ実行可能なバイナリを生成できます。
Goはネイティブコードへコンパイルされるため、API通信、ファイル処理、データ変換などを効率的に実行できます。
ただし、WailsもOSのWebViewに依存するため、OS間で表示や機能に差が出る可能性があります。すべての対象OSでテストすることが重要です。
Flutterは安定した描画が強み
Flutterは独自の仕組みでUIを描画するため、OSが異なっても比較的一貫した見た目と動作を実現できます。
UIを頻繁に更新するアプリや、アニメーションを多用するアプリにも適しています。
一方で、独自の描画に必要な仕組みを含むため、小さなユーティリティを作る用途では、TauriやWailsより配布サイズが大きくなる場合があります。
.NET MAUIは一般的な業務アプリに適している
.NET MAUIは、入力フォーム、データ表示、業務処理を中心としたアプリには十分な性能を備えています。
特に.NETのバックエンドや既存ライブラリと組み合わせることで、開発効率を高めやすい点が特徴です。
Qtは高性能な処理を実装しやすい
QtはC++を中心としたフレームワークで、高い実行性能を求めるアプリに向いています。
大量のデータを扱うアプリ、リアルタイム処理、画像処理、ハードウェア制御などにも利用しやすい選択肢です。
ただし、Qtを使えば自動的に高速になるわけではなく、適切な設計やメモリ管理の知識が必要です。
UIの作りやすさ
Electron、Tauri、WailsはWebの資産を利用できる
Electron、Tauri、Wailsでは、HTMLとCSSを使って画面を作成できます。
React、Vue、Svelteなどのフレームワークや、Web向けのUIコンポーネントを利用できるため、管理画面、チャット画面、エディター、ダッシュボードなどを効率よく作れます。
Wailsには、React、Vue、Svelte、Preact、Lit、Vanilla JavaScriptなどのプロジェクトテンプレートが用意されています。JavaScript版とTypeScript版を選べるテンプレートもあります。
既存のWebアプリがある場合は、画面やビジネスロジックの一部を再利用できる可能性があります。
一方で、そのまま作るとWebサイトのような操作感になりやすいため、メニュー、ショートカット、右クリック、ドラッグ・アンド・ドロップなど、デスクトップ向けの操作を意識する必要があります。
Flutterは独自デザインに強い
Flutterは、細かなデザインやアニメーションをコードで制御しやすいフレームワークです。
OSに依存しない統一されたブランドデザインを実現したい場合に向いています。
反対に、WindowsやmacOSの標準アプリと同じ見た目を再現するには、プラットフォームごとの調整が必要になる場合があります。
.NET MAUIは業務画面と相性がよい
.NET MAUIは、入力フォーム、一覧表示、ナビゲーションなど、一般的なアプリ画面を構築するための機能を備えています。
XAMLによる宣言的なUI構築やデータバインディングを利用できるため、MVVMパターンを採用した業務アプリと相性がよいフレームワークです。
Qtは幅広いUIに対応できる
Qtでは、従来型のデスクトップUIを作るQt Widgetsと、柔軟なUIを構築するQt QuickおよびQMLを使い分けられます。
一般的な業務アプリから、独自デザインの操作画面、グラフ、映像、組み込み機器のインターフェースまで幅広く対応できます。
OS機能との連携
Electron
Electronでは、Node.jsの機能やElectronが提供するAPIを利用して、ファイル、通知、クリップボード、システムトレイ、ウィンドウなどを操作できます。
npmのパッケージも利用できるため、必要な機能を見つけやすい点が強みです。
ただし、画面を動かすレンダラープロセスに強い権限を与えすぎると、セキュリティ上の問題につながる可能性があります。
Tauri
Tauriでは、許可した機能だけをフロントエンドから呼び出せるように、権限を管理する仕組みがあります。
標準機能やプラグインを利用できるほか、必要に応じてRustで独自の処理を追加できます。
必要な権限を絞り込んだアプリを設計したい場合に向いています。
Wails
Wailsでは、Goで定義したメソッドをフロントエンドのJavaScriptから呼び出せます。
Goの標準ライブラリや外部パッケージを利用できるため、ファイル操作、HTTP通信、データベース、暗号化、並行処理などをバックエンド側に実装できます。
Wailsのランタイムには、ウィンドウ、メニュー、ダイアログ、イベント、ブラウザ、ログ、クリップボードなどを扱う機能があります。
GoとJavaScriptの連携がシンプルであるため、フロントエンドを画面表示に集中させ、処理をGo側へ分離しやすい点が特徴です。
一方で、利用したいOS機能がWailsのランタイムに用意されていない場合は、Goの外部パッケージを利用したり、OSごとの処理を実装したりする必要があります。
Flutter
Flutterでは、プラグインを通してOS機能を利用できます。
ただし、モバイルでは利用できても、デスクトップでは対応していないプラグインがあります。採用前に各OSへの対応状況を確認する必要があります。
.NET MAUI
.NET MAUIでは、共通の.NET APIを利用しつつ、必要な部分だけプラットフォーム固有のコードを記述できます。
Microsoftの技術やサービスを中心に構成されたシステムと組み合わせやすい点が特徴です。
Qt
Qtは、ファイル、ネットワーク、データベース、マルチメディア、Bluetooth、グラフィックスなど、幅広い機能を提供しています。
C++からOS固有のAPIや外部ライブラリを呼び出すこともできるため、高度なネイティブ連携が必要なアプリに向いています。
TauriとWailsの違い
バックエンド言語が異なる
TauriとWailsは、どちらもWeb技術でUIを作り、OSのWebViewを利用するフレームワークです。
大きな違いは、バックエンドに使用する言語です。
Tauriでは主にRustを使い、WailsではGoを使います。
Rustは、メモリ安全性や細かな制御、高い性能を重視するアプリに向いています。
Goは、シンプルな文法、短いビルド時間、並行処理、ネットワーク処理などを活用したいアプリに向いています。
セキュリティ設計を重視するならTauri
Tauriは、フロントエンドから利用できる機能や権限を限定する考え方を強く取り入れています。
アプリがアクセスできるファイルやコマンドを細かく管理したい場合は、Tauriが有力です。
ただし、安全性はフレームワークだけで決まるものではありません。Wailsでも、JavaScript側へ公開するGoメソッドを必要最小限にするなど、適切な設計が必要です。
Goの資産を活用するならWails
既存のGoコード、Go製のAPIクライアント、データ処理ライブラリ、CLIツールなどを利用したい場合は、Wailsが適しています。
例えば、既存のGo製CLIツールにGUIを追加したい場合、処理部分を再利用しながら、Web技術で画面を作れる可能性があります。
Rustの学習コストを避け、Goのシンプルさを活かしたい場合にもWailsが選びやすいでしょう。
エコシステムと情報量
Electronは情報を見つけやすい
Electronは利用者が多く、公式ドキュメント、技術記事、サンプル、npmパッケージなどが豊富です。
問題が発生したときに、似た事例や解決方法を見つけやすいことは大きな利点です。
Tauriは急速に成長している
Tauriのコミュニティやプラグインは拡大していますが、Electronと比べると情報量は少ない傾向があります。
特定の機能に対応するプラグインがない場合は、Rustで実装する必要があります。
WailsはGoコミュニティの資産を利用できる
Wails自体の情報量やプラグイン数は、Electronより少ない傾向があります。
一方で、バックエンドではGoの標準ライブラリや外部パッケージを利用できます。
HTTP通信、データベース、ファイル処理、画像処理などについては、Wails専用のプラグインがなくても、一般的なGoパッケージで実装できる場合があります。
WailsのCLIには、プロジェクトの作成、開発、ビルド、パッケージ化を支援する機能が用意されています。
Flutterはモバイルを含めた情報が豊富
Flutterには、多数のパッケージや学習コンテンツがあります。
ただし、検索結果にはモバイル向けの情報も多く含まれます。デスクトップアプリを開発するときは、利用するパッケージが対象OSに対応しているか確認する必要があります。
.NET MAUIはMicrosoft環境と相性がよい
.NET MAUIは、Visual Studio、C#、NuGetなど、.NETの開発環境を利用できます。
Microsoftの公式ドキュメントや企業向けの開発情報が充実しているため、.NET経験者は必要な情報を集めやすいでしょう。
Qtは成熟したエコシステムを持つ
Qtは長期間にわたって利用されており、デスクトップや組み込み開発に関する知識が蓄積されています。
公式の機能が幅広い一方、バージョンによってAPIやビルド方法に違いがあるため、調べる際には対象バージョンを確認することが重要です。
目的別のおすすめ
Webアプリを素早くデスクトップ化するならElectron
既存のWebサービスを短期間でデスクトップアプリにしたい場合は、Electronが適しています。
Web開発者を集めやすく、必要な情報やライブラリも豊富です。
ファイルサイズやメモリ使用量より、開発速度やブラウザ表示の一貫性を優先するプロジェクトに向いています。
軽量性と権限管理を重視するならTauri
HTML、CSS、JavaScriptを使いながら、軽量なアプリを作りたい場合はTauriが有力です。
Rustの安全性を活かしたい場合や、フロントエンドから利用できる権限を細かく管理したい場合にも適しています。
Goで軽量なデスクトップアプリを作るならWails
Goを使ってデスクトップアプリを作りたい場合はWailsが有力です。
特に、次のようなアプリと相性があります。
- APIクライアント
- データ変換ツール
- ファイル管理ツール
- 開発者向けユーティリティ
- 既存のGo製CLIツールに追加するGUI
- ローカルサーバーやネットワークを操作する管理画面
- 並行処理を利用するダウンロードツール
- ログやデータを表示するダッシュボード
WebのUI表現力を使いながら、バックエンドにはGoのシンプルさと標準ライブラリを活用できます。
Electronより軽量な構成にしたいものの、RustよりGoを使いたい場合に選びやすいフレームワークです。
モバイルとデスクトップをまとめて開発するならFlutter
スマートフォン、タブレット、デスクトップに共通のアプリを提供する場合はFlutterが向いています。
特に、OS標準の見た目よりも、サービス独自のデザインを重視するアプリに適しています。
C#とMicrosoft環境を活用するなら.NET MAUI
開発チームがC#や.NETに慣れている場合や、Windowsを中心とした業務システムを作る場合は.NET MAUIが候補になります。
既存の.NETライブラリやビジネスロジックを活用しやすく、モバイル版への展開も検討できます。
高性能で専門的なアプリならQt
画像処理、映像処理、CAD、計測、ハードウェア制御、組み込み機器など、高い性能や細かな制御が必要な場合はQtが適しています。
学習コストは高めですが、長期的に運用する本格的なデスクトップソフトウェアを構築できます。
フレームワーク選びの目安
Electronが向いている場合
Electronは、次の条件に当てはまる場合に向いています。
- チームの中心がWeb開発者
- 既存のWebアプリを再利用したい
- 開発速度を優先したい
- npmの豊富なパッケージを利用したい
- アプリサイズやメモリ使用量を最優先しない
Tauriが向いている場合
Tauriは、次の条件に当てはまる場合に向いています。
- Web技術でUIを作りたい
- 配布ファイルを小さくしたい
- メモリ使用量を抑えたい
- Rustを使いたい
- 権限やセキュリティ境界を細かく設計したい
Wailsが向いている場合
Wailsは、次の条件に当てはまる場合に向いています。
- Web技術でUIを作りたい
- Goをバックエンドに使いたい
- Electronより軽量な構成にしたい
- 既存のGoコードを再利用したい
- API通信やファイル処理を多く使う
- CLIツールへGUIを追加したい
- Rustよりシンプルな言語を選びたい
Flutterが向いている場合
Flutterは、次の条件に当てはまる場合に向いています。
- デスクトップとモバイルに展開したい
- 独自のUIデザインを重視したい
- OS間で見た目を統一したい
- Dartを採用できる
- アニメーションを多用したい
.NET MAUIが向いている場合
.NET MAUIは、次の条件に当てはまる場合に向いています。
Qtが向いている場合
Qtは、次の条件に当てはまる場合に向いています。
- 高い実行性能が必要
- C++経験者がいる
- ハードウェアやOS機能と深く連携する
- 画像、映像、計測データなどを扱う
- 組み込み機器にも展開したい
選定前に確認したいポイント
対象OSを明確にする
最初に、アプリをどのOSへ提供するか決めましょう。
WindowsとmacOSだけでよいのか、Linuxにも対応するのか、将来的にスマートフォンへ展開するのかによって、適したフレームワークは変わります。
WailsはWindows、macOS、Linuxをサポートしています。公式ドキュメントには、Windows 10および11、macOS、Linuxの対応アーキテクチャや開発条件が記載されています。
チームが使える言語を確認する
フレームワークの性能だけでなく、チームが扱える言語も重要です。
Web開発者が多いならElectron、Tauri、Wailsが候補です。
そのうえで、バックエンドにJavaScriptを使うならElectron、Rustを使うならTauri、Goを使うならWailsという分け方ができます。
C#開発者が多いなら.NET MAUI、モバイルと共通化したいならFlutter、C++の経験者がいるならQtが選びやすいでしょう。
必要なOS機能を洗い出す
フレームワークを決める前に、次のような機能が必要か確認します。
- ファイルやフォルダーの読み書き
- 自動アップデート
- システムトレイ
- 通知
- グローバルショートカット
- カメラやマイク
- BluetoothやUSB
- 複数ウィンドウ
- バックグラウンド処理
- オフラインデータベース
- ドラッグ・アンド・ドロップ
- OS起動時の自動実行
必要な機能が標準APIやプラグインで提供されているか、すべての対象OSで動作するかを調べておきましょう。
Wailsでは、メニュー、ダイアログ、ウィンドウ、イベント、クリップボードなどの機能をランタイムから利用できます。
小さな試作を作って比較する
資料だけを見てフレームワークを決定するのではなく、小規模な試作を作ることも重要です。
実際に、次の項目を測定します。
- 開発環境の構築時間
- ビルド時間
- アプリの起動時間
- 配布ファイルのサイズ
- 起動直後のメモリ使用量
- UIの作りやすさ
- OSごとの表示差
- 必要なOS機能との連携
- インストーラー作成の難しさ
- 自動アップデートの実装方法
同じ条件の試作を複数のフレームワークで作れば、一般的な評価ではなく、自分たちのアプリにおける違いを比較できます。
終わりに
デスクトップアプリ開発のフレームワークには、それぞれ異なる強みがあります。
Web開発の経験を活用し、開発速度やエコシステムを優先するならElectronが選びやすいでしょう。
Web技術を利用しながら、軽量性や細かな権限管理を重視したいならTauriが候補になります。
Web技術とGoを組み合わせ、軽量なユーティリティや業務ツールを作りたいならWailsが有力です。Goで書かれた既存の処理やCLIツールを再利用したい場合にも適しています。
デスクトップだけでなく、モバイルにも同じサービスを展開するならFlutterが向いています。
C#や.NETの資産を活用し、WindowsやmacOS向けの業務アプリを作るなら.NET MAUIが有力です。
高い実行性能やハードウェア連携が必要な本格的なソフトウェアでは、Qtが強みを発揮します。
重要なのは、単純に「最も人気があるフレームワーク」や「最も軽いフレームワーク」を選ぶことではありません。
対象OS、必要な機能、開発メンバーのスキル、アプリの性能要件、将来の展開、保守体制などを整理し、自分たちのプロジェクトに合うものを選ぶ必要があります。
Electron、Tauri、WailsのようにWeb技術を利用するフレームワークでも、バックエンドの言語や実行方式は異なります。
JavaScriptを中心に素早く開発するならElectron、Rustの安全性と権限管理を活かすならTauri、Goのシンプルさや既存資産を活かすならWailsという考え方ができます。
最終的には、小さな試作を作り、実際の起動速度、メモリ使用量、配布サイズ、UIの作りやすさ、OS連携を確認することが、長期的に扱いやすいフレームワークを選ぶための確実な方法です。
